腎臓内科
腎臓内科
急性糸球体腎炎(急性腎炎)は、一般的に4歳~10歳くらいまでの子どもで、晩秋から寒冷期に多く発症する病気ですが、成人や高齢者でもときどき見られます。ほかの腎臓病と異なって、ほとんどの場合完全に治ります。この病気の特徴は、タンパク尿回血尿、むくみ、高血圧が出現し、こうした急性期が過ぎると、一般的によくなるのも早い点です。
一般に急性期を過ぎると、むくみ(浮腫)が軽快するとともに血圧が正常に回復し、通常1~3か月後にはタンパク尿や血尿が消失します。しかし、4~5か月後に腎生検(腎臓の組織検査)を行うと、まだ糸球体に病変が残っていることが多く、約6か月は医師の診療を受け、十分に経過を観察する必要があります。その後6か月くらいは無理のない生活をしましょう。可能であればもう一度、腎生検で病気の程度を確認するのが最も確実です。
溶血性連鎖球菌などの細菌による扁桃や皮膚の炎症などがきっかけです。
扁桃やのどの炎症(多くは発熱)が治ってから、1~2週間後に血尿(目では分からないことも多い)やタンパク尿、むくみ(浮腫)、高血圧などが出現。全身倦怠などの症状が出る場合もあります。体重を量ると、急に太っていることが分かります。高血圧の影響で頭痛を訴えたり、吐いたりすることもあります。重症の場合は、尿量が少なくなり、むくみ(浮腫)が強くなって肺までむくみがおよび(肺水腫)、呼吸困難となり一時的に透析が必要なこともあります。
保存的治療が中心です。安静、保温のほか、水、塩分、タンパク質の食事制限が行われます。急性期には溶連菌感染に対する抗生物質の使用と、高血圧に対して降圧薬と利尿薬が使われることもあります。これらの治療は、発病初期の数日から数週間に限られ、検尿の異常以外の症状がなくなったら普通の生活に戻し、通常は薬を服用する必要もありません。
慢性糸球体腎炎(慢性腎炎)は、タンパク尿や血尿が長期間(少なくとも1年以上)持続するものをいいます。腎臓病の中でも最も多いものとして知られています。慢性糸球体腎炎は1つの病気ではなく、さまざまな病気の総称です。最近の研究によって、慢性糸球体腎炎の中にもいくつかタイプがあり、症状が進行しにくいものもあることが分かっています。
免疫反応の異常によるものが多いと考えられています。
血尿、タンパク尿、高血圧、めまい、肩こり、むくみ(浮腫)、頭痛、倦怠感など。
治療の基本は食事療養や薬物療法です。むくみが強い場合は、利尿薬を使用して血液中の塩分回水分の排泄を促します。血圧の維持に努め、症状の悪化を防ぎます。生活の上では、激しい運動や過労を避けます。
ネフローゼ症候群とは、尿にタンパクがたくさん出てしまうために、血液中のタンパクが減り(低たんぱく血症)、その結果、むくみ(浮腫)が起こる疾患です。むくみは、低タンパク血症が起こるために血管の中の水分が減って血管の外に水分と塩分が増えるために起こります。
高度になると肺やお腹、さらに心臓や陰嚢にも水がたまります。また低タンパク血症は血液中のコレステロールも増やします。その他、腎不全、血栓症(肺梗塞、心筋梗塞、脳梗塞など)、感染症などを合併する危険性があります。
ネフローゼ症候群の原因はさまざまであり、腎生検を含めた検査を行います。
治療は、むくみをコントロールする対症療法(安静・塩分制限・利尿薬)と原因治療(ステロイド薬など)を行います。
むくみ、尿の泡立ち、だるさ、体重の増加など。
※症状があまり認められず、健康診断ではじめてわかる場合もあります。
糖尿病性腎症は糖尿病の合併症です。糖尿病性腎症の場合、急に尿が出なくなるのではなく、段階を経て病気が進行します。このため、できるだけ早期に発見し、適切な治療をすることが重要です。現在は、糖尿病性腎症が原因で透析を受けることになった人が、全透析患者のうち44.1%(2012年末現在)と最も多い割合を占めています。
糖尿病で血糖値の高い状態が長期間続くことで、全身の動脈硬化が進行し始め、毛細血管の塊である腎臓の糸球体でも細かな血管が壊れ、網の目が破れたり詰まったりして老廃物をろ過することができなくなるとされていますが、根本的な原因ははっきりしません。
病気の進行段階によって症状が異なります。
第2期(早期腎症)および第3期(顕性腎症期)では厳格な血糖コントロールを行ないます。血糖コントロールは、低カロリー食、運動療法が基本ですが、糖尿病薬の服用およびインスリンの注射も行われます。
第4期になると厳密な低タンパク食にする必要があります。腎不全期も、食事療法としてタンパク質の摂取制限を行いますが、血液中のクレアチニンの量の増え方によっては透析療法の準備をします。糖尿病性腎症には高血圧を伴うことが多いので、降圧薬の使用も重要です。
何らかの原因によって腎臓の機能が急激に(1日以内から数週間のうちに)低下し、その結果、体液の量を一定に維持できなくなった状態です。腎臓には本来、血液中の老廃物や余分な水分を尿という形で体外に排泄するはたらきがあります。急にこれらの機能が低下すると、過剰な水分の蓄積や電解質※1の異常を招き、生命に危険を及ぼす重篤な状態になります。近年は手術や重症の感染症によって、全身の様々な臓器が障害を受ける多臓器不全の一部として発症することが多くなっています。
症状としては、尿量の減少あるいは無尿、血尿、褐色調の尿、吐き気、食欲不振、全身倦怠感、意欲減退、痙攣(けいれん)などがあります。医療機関で採血した結果、急性腎不全と診断される場合もあります。原因は様々ですが、大きく3つに分類され、この分類は治療法にも深く関連しています。
慢性腎臓病(chronic kidney disease=CKD)は慢性に経過するすべての腎臓病を指します。CKDの原因にはさまざまなものがありますが、生活習慣病(糖尿病、高血圧など)や慢性腎炎が代表的でメタボリックシンドロームとの関連も深く、誰もがかかる可能性のある病気です。日本ではCKDの患者が約1,330万人(20歳以上の成人の8人に1人)いると考えられ、新たな国民病ともいわれています。
CKDの初期は自覚症状がありません。病気が進行すると、夜間尿、貧血、倦怠感、むくみ(浮腫)、息切れなどの症状が現れてきます。これらの症状が自覚されるときには、すでにCKDがかなり進行している場合が多いといわれています。体調の変化に気をつけているだけでは、早期発見は難しいのがこの病気の特徴です。早期発見のためには、定期的な検査が有効です。腎臓の働き(腎機能)の指標はGFR(糸球体濾過量)で表されます。